賢い患者になりましょう

「賢い患者になりましょう」

医師の過重労働が問題になっています。年間4,000時間労働も珍しくありません。これは日本人平均の倍です。一部の医師といえども、なぜ、そこまで働かなければならないのか。

経済協力開発機構(OECD)のまとめた報告書によれば、日本の国民1人が医師の診察を受ける回数は年12.9回とOECD平均(6.6回)のほぼ2倍となっています。最新の医学を学び続けなければならない立場にあるのも確かですが、医療現場で、お医者さんがやたらと忙しい背景には、こんな病院好きの国民性もあると思います。
今では、大病院に紹介状を持たずに受診すれば、何千円か上乗せされた金額の診療費を払わなければなりません。それでも大学病院などにかかりたいという方は多くいます。その結果、どういったことになるでしょうか。大きな病院の勤務医の任務は、外来も大事なのですが、主には入院患者の診療となります。軽症患者も多い外来を終えてぐったりしたまま、病棟に入ることになります。そして残業です。病床当たりの医師数が少ないことも病院勤務の医師を長時間労働に追いやっています。
日本は人口当たりの医師数が少ない、いや諸外国と比べてもそん色ない、など色々な意見があります。ただ忙しいのは確かです。いわゆる「かかりつけ医」としての役割を果たす開業医(診療所)の先生方に余裕があるのではないか、という意見もありますが、それぞれに言い分があります。ただ、言えるのは、どこの病院でも診療所でも自由に受診できるフリーアクセスという制度が、「念のため」、「もしかしたら」とドクターショッピングという行動に走る方を招いている、そんな状況もあります。安心安全のため、フリーアクセスを否定するものではありませんが、医療費は国民皆で負担しているものです。出来るだけかかりつけの先生に相談しながら医療を受けたいものです。
国はマイナンバーカードを健康保険証に代える方針を打ち出しました。具体的にどう動いていくかは分からないところもありますが、受けた診療の記録(カルテそのものではありませんが)と服用してきた薬の一覧が閲覧できるようになって行きます。人口減少が本格化している日本において、医療の生産性も上げて行かなければなりません。
賢い患者となって日本の医療を守りたいと思います。

医療コンサルタント
(元大阪市立大学大学院特任教授)
松村眞吾

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